活ウニの氷水畜養試験
氷水畜養装置を使用し、活ウニの畜養を試みました。
氷水畜養装置の概要
氷水畜養装置は、外槽(真水)と内槽(海水)の水槽本体と、冷凍機器と制御装置を収納した運転操作盤ユニットで構成する。外槽と内槽は、耐食性の良い厚さ3㎜のステンレス薄鋼板(sus316)を加工し製作、これに厚さ75㎜のウレタンパネルで包み防熱性を確保し、ステンレス製(sus304)の架台に据付ける。なお、装置の蓋は3分割し厚さ50㎜のウレタンパネルで製作する。内槽の畜養時容積は1,000立方㍍(最高1,100立方㍍)、外槽容積は200立方㍍とし、内槽を種別毎にウニ生態を調査するためと、強度を確保するために有孔の間仕切り板で6分割する。外槽には直径20㎜のステンレス製の冷媒管を前後左右の4面につづら折りで敷設、全面の1箇所に製氷の形成、融解を制御観測するセンサーを取付ける。一方の運転操作盤ユニット下部には、1.1kWの冷凍機(冷媒R407C)、圧縮機1.5HPを、操作盤内には冷凍機の制御、温度設定装置を収納する。また、備品として、アンモニア濃度計、溶存酸素濃度計、海水温測定機器、給気装置を付帯する。
運用実験
試験目的
稚内地域におけるウニ漁は6月から7月上旬で、利尻・礼文島観光の最盛期と重なり活ウニの需要はピークを迎えることとなる。ただし、ウニ漁の期間は短く、その間に観光客に提供する需要量を満たす活ウニを確保する必要があるが、この活ウニを新鮮なまま数日間を保存しておく方法は確立されいていない。
長期保存が難しい活ウニについて、水温0℃の環境下で畜養する事で長期保存する事を目的とする。
試験結果
0℃の水温で60日間の無給餌による畜養を達成し、歩留まり調査を行ったが身痩せはしておらず、食味の変化も無いというデータを得られた。
活ウニ氷水畜養試験実績
平成25年5月
活ウニの氷水貯蔵試験 計画書(目的、課題と試み、試験内容)
平成25年6月
第1回ウニの畜養実証実験開始
活ウニ畜養実証試験概要
水温0℃の環境でウニは畜養可能か
2週間の畜養に成功し、ウニは0℃での畜養可能との成果を得る
平成26年1月
実験結果に基づき特許出願
平成26年1月
活ウニ畜養プロジェクト 提案書 (枠組、畜養規模の設定、畜養条件)
平成26年6月
第2回ウニの畜養実証実験開始
活ウニ畜養実証試験概要
第1回の試験の検証を行う為、0℃~1℃の環境でのウニの活動を再度確認する。
0℃の環境でウニは活動を停止した事を再度確認する事が出来た。
平成27年1月
1,000㍑型の冷凍機器を利用する「活ウニ畜養装置」の技術開発 計画書
⑴技術開発の進歩
⑵助成金制度の活用
⑶活ウニ畜養装置の仕組みと制御技術
⑷技術開発費
平成28年2月
特許取得
発明品目:【氷を利用する活ウニ畜養方法】
登録番号
5887585号
平成28年6月
礼文町補助事業 活ウニ畜養装置の製作等に係る技術協力について提案
平成28年10月
活ウニの氷水畜養試験計画書(案)
⑴ウニの氷水畜養の目的
⑵現状の課題と取り組み
⑶活ウニ畜養装置の仕組みと制御技術
⑷次年度の試験内容
平成29年6月
1回目 ウニ氷水畜養試験業務委託(礼文町役場) 開始
活ウニ畜養試験概要
活ウニ氷水畜養試験における畜養装置の性能確認調査
個体数を増やした時の長期畜養方法と出荷方法の確立の為の試験調査
平成29年11月
ウニ氷水畜養試験委託業務 報告書提出
バフンウニはムラサキウニと比べて、水質の変化等のストレス
に強く畜養試験に適していると分かった。 76日間の畜養を達成。
平成30年6月
2回目 ウニ氷水畜養試験業務委託 (礼文町役場) 開始
活ウニ畜養試験概要
バフンウニを試験個体とし、水槽内で適切に畜養可能な最大数を把握する為密度
試験を実施する。又、長期保存日数の日数増加を目指す。
平成30年11月
ウニ氷水畜養試験委託業務 報告書提出
水温10℃位から徐々に下げていく事で菌の繁殖をを抑える事がわかった。
畜養可能な適正な個数を把握する事が出来た。
低温にて畜養を実施した結果、68日間の生存を確認する事ができた。
令和1年6月
3回目 ウニ氷水畜養試験業務委託 (礼文町役場) 開始
活ウニ畜養試験概要
過去2年間のデータを基に、800個程度のバフンウニに畜養試験を行い
60日間の畜養、生存率70%以上を目指す。
令和1年8月
ウニ氷水畜養試験 実施。
令和1年11月
ウニ氷水畜養試験業務委託 報告書提出
生存率70%以上60日間畜養を達成する。
10℃以下から畜養開始し、0℃での管理を実施。
死亡個体を積極的に取り除く事で水質を維持し目標達成となった。
60日後のウニに身痩せは無く、食味の変化も無かった。
今後の用途について
魚・貝類の鮮度保存及び鮮度保存しての輸送等にも
試験データを蓄積したいと考えております。